境界的なオブジェクトとしての「おひとりさまフレンドリー社会」
2023年11月13日
医師の中村です。
今日は「境界的なオブジェクト」の話です。
在宅医療においては、時に解決困難な問題をかかえる
事例に遭遇することがあります。

ところが、この困難さとは、医療しか知らない人間にとって
「困難」であるにすぎず、福祉の専門家や法律の専門家にとっては
普通の問題であるということを経験します。

「困難」と感じる事例においては、
自分の専門領域からの越境が必要とされています。
自分の専門領域から越境するにはどうすればいいのでしょうか。

境界的なオブジェクト(boundary object)という概念があります。
境界的なオブジェクトとは、複数のコミュニティで共有されることにより、
コミュニティ間のコミュニケーションを支える存在のことです。

それぞれのコミュニティでは、異なる意味づけがされていても、
物自体は同一であるというものです。
境界的なオブジェクトが媒介になることで、
境界を越えた協働が可能になるとされています(香川ら 2015、p.22)。

境界的なオブジェクトのわかりやすい例として、SDGsがあります。
いろいろな世界の人が、SDGsという共通目標を通じて、
コミュニケーションがとりやすくなります。
境界的なオブジェクトとして、
私は「おひとりさまフレンドリー社会」という言葉を提唱しています。

「おひとりさまフレンドリー社会」とは、
「認知症フレンドリー社会」 をヒントに、私が考案した造語です。
「認知症フレンドリー社会」とは、
「認知症があっても、日常生活や社会生活が不自由なく送れるような地域や社会」
のことで(徳田 2018、p.38)、認知症になったとしても普通に暮らせるように
社会の側のデザインを変えてみよう、という考え方です。

これにならい、おひとりさまであっても、日常生活や社会生活が
不自由なくおくれるような社会を「おひとりさまフレンドリー社会」と定義しました。
私は「おひとりさまフレンドリー社会」という言葉を
地域の中でひろめることで、境界的なオブジェクトとして機能させたいと思います。

地域の中のさまざまなプレイヤーが、
「おひとりさまフレンドリー社会」を実現するために協働することで、
個々の領域から越境することが可能になるのではないかと考えています。

参考文献
香川秀太、青山征彦(2015)『越境する対話と学び』新曜社.
徳田雄人(2018)『認知症フレンドリー社会』岩波新書.
無 料

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