おはようございます。医師の中村です。
今日は緩和医療医の大津先生の書かれた「死ぬときに後悔すること25」という本を紹介します。
その名の通り、死を前にした人が後悔する25のことが紹介されています。
私が印象に残ったのは、22番目の後悔、「自分の生きた証を残さなかったこと」(大津 2013、p.166)です。
大津先生は、人生の総括は早めにしておいたほうがよいとすすめています。私もまったく同感です。癌の終末期など、症状が重くなってから、生きた証を残そうとしても難しい。
生きた証を残しておくこと、例えば手紙などがあるでしょう。家族にあてて感謝や伝えたいことを手紙にしておく。
残された家族にとって、その手紙はかけがえのないものになります。手紙を書く人にとっても、手紙を書くことによって前向きに生きていけます。
緩和ケアにはディグニティセラピーという、効果の実証された方法があります。チョチノフが考案した方法で、死を前にした患者に対する緩和ケアの方法です。患者の人生史がもってきた意味や価値を、ケア者が丁寧に聞き取り、それを遺されていく人たちに伝えるための「生成継承文書」をつくります(宮坂 2020、p.147)。生成継承文書とは手紙のようなもので、大津先生のいう生きた証といえるでしょう。
死が近づいてくると、いろいろ出来ないことが増えていきます。そのような状況であっても、生成継承文書をつくることを通して、患者さんは尊厳(ディグニティ)をとりもどすことができます。
みなさんにとって、生きた証とは何でしょうか?
誰に生きた証を伝えたいでしょうか?
大津秀一(2013)『死ぬときに後悔すること25』新潮文庫
宮坂道夫(2020)『対話と承認のケア ナラティブが生み出す世界』医学書院