ケアとは何か①
2022年8月13日
おはようございます。医師の中村です。
村上靖彦さんの著書「ケアとは何か 看護・福祉で大事なこと」を参照しながら、「ケア」について考えてみたいと思います。
寝たきりで意思表示が難しい患者さんがいます。介護しているご家族が、ご本人の何気ない表情や声を察知して、
「今日は嬉しそう」、「今はしんどそう」、「いつもと様子が違う」と教えてもらうことがあります。
患者さんが何かを訴えかけようとしていても、言葉にならず困っていると、ご家族が「通訳」してくれたりもします。
ご家族が患者さんのかすかなサインをキャッチし、早めの対処が可能になった経験もありました。
自発的にサインを出せない人(例えば植物状態の人など)とのコミュニケーションは、かすかなサインを受け取る感受性が必要です。
眼差しや声、ふるまいなどで表現される、かすかなサインをキャッチする力が求められます。
村上(2021)は、ケアとはかすかなサインをキャッチする力を最大限追求する営みであると述べ、「〈からだ〉に耳を傾ける」と表現しています(村上 2021 、p14)。
ご家族のキャッチする力は、まさに村上の言うところの「ケア」といえるではないでしょうか。
注釈1.
<からだ> 村上(2021)は、身体について「臓器」と〈からだ〉という言い方をしています。
客観的に扱うことができる「臓器」は、まさに医療行為の対象です。
それに対して、〈からだ〉は内側から感じるあいまいなものです。〈からだ〉と心との区別もあいまいであり、
ケアはこの〈からだ〉にアプローチするものです(pⅲ)。