終末期の輸液に関するエビデンス
2022年6月24日
おはようございます。医師の中村です。今日は終末期の輸液について書きたいと思います。
余命が週単位の患者さんを対象にした場合、輸液をルーチンに行うことは、患者さんの自覚できる症状や生命予後に影響しないとされています。1000ml/日の輸液は、腹水・浮腫などの体液過剰症状は悪化する、せん妄と気道分泌に差はない、皮膚の脱水は輸液しているほうがいくらか悪化の程度は軽い、ということもわかっています。ただ、注意が必要なのは、脱水が著明な患者さんや認知機能障害のある患者さんは、こうしたトライアルから除外されていたということです。
輸液に対する意味づけは人それぞれです。輸液を受けることを「無意味な延命になる」と考える人がいる一方で、輸液を「いのちの象徴」ととらえる人もいます。点滴をしないことで「寿命が短くなる」、「苦痛な症状が増える」と考える人もいます。終末期の輸液は医学的にエビデンスがないから「輸液は無意味」と、一方的に医学的正解をおしつけるのも違う気がします。患者さんやご家族の思いを聴きながら、輸液について一緒に考えていくことが大切だと思います。
参考文献 「死亡直前と看取りのエビデンス」